東京湾北部地震(M7.3)の被害想定 【首都直下地震】
平成24年4月18日 東京都防災会議 地震部会「首都直下地震等による東京の被害想定」報告書より
東京湾北部地震(M7.3)のゆれ・液状化による被害
フィリピン海プレート上面が従来の想定より浅かったという新しい知見をとり入れて検証した結果、震度7の地域が発生するとともに、震度6強の地域が区部の約7割に広がりました。
このため、ゆれによる建物倒壊や火災延焼などを原因とする人的被害が発生し、冬18時、風速8m/sにおいて、約9,700人の死者が発生すると想定されます(今回の想定地震の中で最大)。
また、区部東部では、軟弱地盤が厚く堆積して地震動が増幅されやすく、液状化の被害も発生しやすいことなどから、ゆれや液状化による被害が想定されます。
震度分布
震度7の地域も見られ、震度6強の面積は前回調査結果(平成18年5月)の約305km2に比べ約444km2と増えている。
東京湾北部地震 震度分布図
液状化危険度分布
液状化危険度は想定4地震の中で最も大きく、主に区部の低地部を中心にして液状化しやすい結果となっています。
東京湾北部地震 液状化危険度
斜面崩壊危険度
急傾斜地崩壊危険個所は、主に八王子市以西の地域に分布するが、区部の台地と低地の境界部にも分布している。山腹崩壊危険地区は八王子市以西に分布している。
東京湾北部地震では、区部の震度が高いため、区部に存在する急傾斜地等の危険度が高くなっている。
火災延焼
東京湾北部地震のゆれによる出火件数は、最大811件と想定される。
また焼失棟数は、最大約20万棟となった。
東京湾北部地震 焼失棟数(東京湾北部地震 冬18時 風速8m/s)
東京湾北部地震(M7.3)の被害のまとめ
死者数
ゆれによる建物倒壊や火災延焼などを原因とする人的被害が発生し、冬18時、風速8m/sにおいて、約9,700人の死者が発生すると想定される。
内訳 | 冬の朝5時 | 冬の昼12時 | 冬の夕方18時 |
---|---|---|---|
死者合計 | 7,649人 | 6,296人 | 9,641人 |
ゆれによる建物全壊 | 6,927人 | 4,972人 | 5,378人 |
急傾斜地崩壊による建物全壊 | 76人 | 79人 | 76人 |
地震火災 | 540人 | 1,138人 | 4,081人 |
ブロック塀 | 103人 | 103人 | 103人 |
落下物 | 4人 | 4人 | 4人 |
風速8m/秒
負傷者数
内訳 | 冬の朝5時 | 冬の昼12時 | 冬の夕方18時 |
---|---|---|---|
負傷者合計(重傷者) | 138,804人 (18,073人) |
134,854人 (18,267人) |
147,611人 (21,893人) |
ゆれによる建物全壊 | 133,140人 | 126,530人 | 125,964人 |
急傾斜地崩壊による建物全壊 | 95人 | 99人 | 94人 |
地震火災 | 1,725人 | 4,381人 | 17,709人 |
ブロック塀 | 3,543人 | 3,543人 | 3,543人 |
落下物 | 301人 | 301人 | 301人 |
風速8m/秒
建物被害
強いゆれの範囲は広がったが、前回調査と比べ、耐震性が低い昭和56年以前の木造建築棟数が大幅に減少したことから、建物被害については減少した。
区部西部から南西部にかけての環状7号線と8号線の間を中心とする地域や区部東部の荒川沿いの地域は、木造住宅密集地域が大規模に連担しており、火災延焼被害を受けやすい地域特性を有している。
このため、区部において震度6強以上の強い地震動が想定される東京湾北部地震では、これらの地域を中心に大規模な火災延焼被害が想定され、4つの地震の中でも最大となる焼失棟数約20万棟、4,000人の死者が想定される。
内訳 | 冬の朝5時 | 冬の昼12時 | 冬の夕方18時 |
---|---|---|---|
建物被害合計 | 136,297棟 | 166,906棟 | 304,300棟 |
ゆれ液状化などによる建物全壊 | 116,224棟 | 116,224棟 | 116,224棟 |
地震火災 | 21,240棟 | 54,417棟 | 201,249棟 |
風速8m/秒
交通被害
都内の道路、鉄道の橋脚については、耐震化が進んでおり、落橋や橋の変形などの大被害はほとんど発生しないと想定される。
震度6強が想定され建物全壊が生じる地域では、沿道建物の倒れ込みによる細街路の閉塞が想定される。
東京湾北部地震では、区部西部から東部の木造住宅密集地域を中心に細街路の閉塞が想定される。
これらの地域では、救助・救急活動や消火活動等の応急活動や避難行動等への支障が想定される。
また都内では、交通渋滞が地震発生時の緊急輸送道路における通行支障の原因となり得る。
内訳 | 冬の朝5時 | 冬の昼12時 | 冬の夕方18時 |
---|---|---|---|
道路被害 | 6.9% | 6.9% | 6.9% |
鉄道被害 | 2% | 2% | 2% |
風速8m/秒 新幹線の被害を除く
ライフラインの被害
東京湾北部地震では、揺れによる建物全壊や火災延焼による電柱折損などにより、区部の約30%で停電が想定され、区部東部では60%以上の停電率が想定される区がある。
都市ガスでは、地表面最大速度が60kineを超えた地区において、ガスの供給を停止する取り決めがなされており、区部を大半が60kineを超えることが想定されるため、供給停止率は高く想定される。
上水道では、想定地震動が大きく、震度6強以上の地域が広範囲になることや、液状化の影響を受けたことにより断水率が約50%と想定される。
下水道では、震度6強以上の地域が広範になることや、液状化の影響を受けたことにより、区部では東京湾北部地震で管きょ被害率が約27%となる。
内訳 | 冬の朝5時 | 冬の昼12時 | 冬の夕方18時 |
---|---|---|---|
電力施設(停電率) | 11.9% | 12.9% | 17.6% |
通信施設(固定電話不通率) | 1.3% | 2.6% | 7.6% |
ガス施設(低圧ガス供給支障率) | 26.8~74.2% | 26.8~74.2% | 26.8~74.2% |
上水道施設(断水率) | 34.5% | 34.5% | 34.5% |
下水道施設(管きょ被害率) | 23% | 23% | 23% |
風速8m/秒
その他の被害
ゆれや液状化による建物全壊やライフラインの寸断に伴い、大量の避難者が発生する。建物被害が最大となる東京湾北部地震の避難者は約340万人と想定される。
都内における帰宅困難者は約517万人となる。また、都内に滞留している人のうち、職場や学校など所属する場所がないために屋外で滞留する人数が約163万人と想定される。
内訳 | 冬の朝5時 | 冬の昼12時 | 冬の夕方18時 |
---|---|---|---|
帰宅困難者 | 5,166,126人 | 5,166,126人 | 5,166,126人 |
避難者 | 2,656,898人 | 2,788,191人 | 3,385,489人 |
エレベーター停止台数 | 7,008台 | 7,096台 | 7,473台 |
災害要援護者死者数 | 3,654人 | 2,934人 | 4,921人 |
自力脱出困難者 | 60,450人 | 56,419人 | 56,564人 |
震災廃棄物 | 3,882万トン | 3,957万トン | 4,289万トン |
風速8m/秒 エレベーター停止台数は、閉じ込めにつながり得るもの
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