富士山の火山噴火

内閣府 富士山火山防災協議会 富士山ハザードマップ検討委員会報告書より

活火山としての富士山について

富士山は、今でも噴火する可能性のある活火山です。下記の表に示す通り、過去に何度も噴火しています。直近では、1707年に富士山が噴火していますが、この宝永噴火の49日前に南海トラフでマグニチュード8.6と推定される宝永地震が発生しています。

今回、防災科学技術研究所などの研究により、2011年3月11に発生した東日本大震災と、その4日後の3月15日に富士山周辺で発生したマグニチュード6.4の地震によって、マグマだまりに噴火を引き起こしかねないほどの大きな圧力がかかったことがわかりました。噴火にいたる要因は様々ですが、このマグマ溜まりへの圧力は、先の宝永地震の時よりも強く、富士山噴火への影響が危惧されております。

そこで、内閣府の富士山火山防災協議会の資料より、私たちにとって重要となる情報をまとめました。

過去の噴火状況について

781年 山麓に降灰、木の葉が枯れた
800~802年 延暦噴火(えんりゃくふんか)
大量の降灰、噴石。
864~866年 貞観噴火(じょうがんふんか)
約2200年前以降で最大の溶岩流噴火。
溶岩流出(青木ヶ原溶岩)。溶岩により人家埋没。湖の魚被害。
937年 噴火
999年 噴火
1033年 溶岩流が山麓に達した
1083年 爆発的な噴火
1511年 噴火
1560年 噴火
1707年 宝永噴火(ほうえいふんか)
約2200年前以降で最大の火砕物噴火。噴火前日から地震群発、12月16日から2週間にわたって爆発的な噴火。江戸にも降灰。噴火の49日前にマグニチュード8.6(推定)の宝永地震が発生。

火口形成可能性マップ

橙色の領域は大規模噴火、 橙色と緑色を合わせた領域は中規模噴火、橙色、緑色及び薄黄色を合わせた領域は小規模噴火の可能性のある領域を示しています。

富士山 噴火地図

火山情報の発表について

富士山の火山活動に異常が発生した場合、気象庁から火山情報が発表されます。
大規模な噴火に関しては、前兆現象からある程度予測することは可能で、火山情報が発表される可能性が高いと考えられます。小規模な噴火の場合は、前兆現象は不明瞭な場合が多く、火山情報が発表されずに噴火することもあり得ます。
いずれの場合も噴火開始前に、噴火規模や様式、噴火地点を正確に予測することは困難です。
また、顕著な異常現象があっても噴火に至らない場合もあります。

前兆現象と噴火までの時間

  • 宝永噴火の場合、明瞭な前兆現象(有感地震の多発、鳴動)の出現から十数日後に噴火が発生している。
  • 富士山と同じ玄武岩質火山である三宅島の場合、前兆現象(地震の多発)の数時間後に溶岩流を伴うような噴火が発生している。

被害想定のまとめ

  • 最大で約2兆5千億円にものぼる甚大な被害が想定されます。
  • 富士山付近では、粒径の大きな降下物が厚く積もることから、建物被害、道路、鉄道などの交通施設の埋没、農地の埋没が想定され、降下物の除去も困難となる。また、噴石により人的被害も想定される他、避難途中の車両の損壊なども想定されるため、迅速な避難などの対応を考える必要があります。
  • 降灰があった場合には、作物が枯死したり、商品価値がなくなります。また、一旦降灰があると土壌にも影響を与えるため、その年は収穫がなくなるため、降灰の除去が困難な農林業の被害は大きいと想定されます。
  • 観光業については、降灰を除去しても観光客数がすぐ回復せず、観光地の回復が長期間を要すると想定されます。
  • 道路、鉄道、電力等のインフラや建物の被害については、降雨がある場合と、 そうでない場合で被害状況が大きく異なります。交通と電力は、直接的な被害だけでなく、多くの産業への流通障害や製造ラインの停止などの波及的な被害を及ぼします。
  • 降雨時には積もった火山灰の重さが増すため、木造建物に大きな被害が想定されます。

被害想定の詳細はこちら

富士山周辺で考えられる被害

溶岩流 建物などの火災、埋没、破壊など
噴石 人体の損傷、建物などの破壊など
降灰 広域において埋没、加重による倒壊など
細粒火山灰により人体、交通等への影響
火砕流 人命損失、建物などの火災・埋没、森林破壊など
火砕サージ
水蒸気爆発 人体の損傷、建物などの破壊など
岩屑なだれ 建物などの埋没、破壊
融雪型火山泥流
噴火に伴う土石流
噴火に伴う洪水
火山性地震(地殻変動)
津波
空振 窓ガラスなど建物の一部破壊
火山ガス 人間を含む動物の死亡、植物枯死など
斜面表層崩壊 登山者死傷、山小屋・登山道などの埋没、破壊
岩屑なだれ 家屋・公共施設など埋没、流失、破壊
豪雨等に伴う土石流
豪雨等に伴う洪水 家屋・公共施設など流失、破壊、浸水
雪泥流 家屋・公共施設など流失、破壊
落石 登山者の死傷

噴火時の富士山周辺一般道路の交通規制

臨時火山情報発表時(噴火の可能性)

  • 臨時火山情報時避難範囲:全面通行止め
  • 緊急火山情報時避難範囲:避難ルート確保のための交通規制
  • 災害時要援護者避難範囲:避難ルート確保のための交通規制

緊急火山情報発表時

  • 臨時火山情報時避難範囲:全面通行止め
  • 緊急火山情報時避難範囲:全面通行止め
  • 災害時要援護者避難範囲:避難ルート確保のための交通規制

噴火時

  • 一般住民等噴火時避難範囲:全面通行止め
  • 災害時要援護者噴火時避難範囲:避難ルート確保のための交通規制

大量降灰により堅牢建物屋内退避の呼びかけ

  • 降下物危険範囲:全面通行止め

大雨警報発表時

  • 土石流警戒範囲:全面通行止め
  • 降灰による視界の悪化や、路面状態の悪化(スリップ誘発)等が発生した場合は、必要に応じて速度制限もしくは全面通行止とする。
  • 全面通行止めは、避難車両・緊急車両を除く

その他、交通機関の噴火時の対応

高速道路

一般住民等噴火時避難範囲:全面通行止め

鉄道

一般住民等噴火時避難範囲:運行中止
※鉄道の運行中止を行う場合は、折り返し運転に伴う最寄り駅への利用者の誘導、バス等による輸送を実施

航空機

火口の周囲、半径5kmの上空及び第一次ゾーン(噴火時):飛行の自粛の要請
※第1次ゾーンとは、ごく小規模の噴火であっても、瞬時に降下物・流下物による危険の及ぶ可能性がある範囲